筆まめのみなさま、尊敬します。
久々の続きです。
こちらは石膏型。
トリッシャムなる道具で足裏の凹型を取った後、
石膏を流し込み乾燥させると上記の足底の3Dコピーが取れます。
かなり精密で、シワもしっかり写し取られています。
そしてこちらは後足部の石膏型。左足ですね。
後ろから見るとこんな感じです。
昨今スポーツではバイオメカニクス(動体力学)の解析など盛んです。
ただ木型づくり革靴づくりにおいては、形状把握や素材選びがモノを言う、というのが私の認識です。
足は全て3Dの曲面になりますので、端から追っていく、センターを出すというような、
建築的手法は使えません。
ですので、無理やり基準線を引いていきます。
無理やりと言っても、先達方が残してくださった方法に私がアレンジを加えたものです。
まずは2Dのフットプリントに基準線を引き、それを3Dの足底型に写し取ります。
同様に、後足部の型にも基準線を書き込みます。
採寸用紙に合わせて上から覗くとこのような感じ。
ふむふむ。足の形状が掴めてきました。
革靴にはつま先と踵周りに芯材が入っており、
特に踵周りの芯材は体を支える”支持力”を生み出す肝となります。
踵が地面に着地する際の最も不安定な状態をガッチリ支えてやることで、
余分な運動神経を使わず、歩みを進める事ができます。
HOME BASE では、5㎜厚ほどのヌメ革を加工した芯材を用いていますので、
例えば甲革2.5㎜裏革1.5㎜のブーツの場合、踵周りは最大9㎜厚の革で歩きを支えます。
…ただ、革が厚く硬くなるほどに、フィットしない場合は最悪です。
痛みが出るリスクが増えます。
ですので、後足部についてはより明確に形状を把握できるよう別に型を取っています。
この形状についても全く型通りに木型を削ると、
スッポンスッポン踵が抜ける靴が出来上がるのですが、それはまた別の機会に。
では、前足部はどうなのか。
これは硬い革で支えるのではなく、
足を入れた際の形状変化で足を押さえていきます。
市販靴に表記されているDとかEとかEEEという記号。
これは足囲(母趾の付け根と小趾の付け根を通った周囲)の表記です。
JIS規格(男性・足長260㎜)だと以下の通り。
サイズ(足長):26.0cm(260mm)
足囲/足幅=ワイズ 225mm/94mm=A 231mm/96mm=B 237mm/98mm=C 243mm/100mm=D 249mm/102mm=E 255mm/104mm=2E(EE) 261mm/106mm=3E(EEE) 267mm/108mm=4E(EEEE) 273mm/110mm=5E(EEEEE/Fワイズ) 279mm/112mm=6E(EEEEEE/Gワイズ)
グルリと周囲が足囲。
最も幅広の部分の距離が足幅。
採寸して表を見ると「へぇー、自分の足囲は2Eと3Eの間かぁ…。」
などとなるのですが、
靴の足囲として設計した部分と、自分の足の足囲の位置が合っているか。
位置が合っていたとして、母趾と小趾の位置関係(角度といいますか)は皆同じなのか。
周囲の寸法は合っているが高さ(厚み)はどうか。
etc...
細かい事を言い出すとキリがないのですが、JIS規格はザックリとした目安であって、
それを基に靴選びをするのは難しいということです。
靴のJIS規格が悪いわけではなく、
それくらい足の形状はバリエーションに富んでいる。
ということでもあります。
はい。JIS悪くない。
どこかで基準を作らなければ量産してコストを下げる事は出来ませんので、
靴のような日用品では製作の基準を定めるのはとても大切です。
おかげで市販品から靴選びが出来る人の割合はグッと増えたと思いますし。
気軽に靴を買える楽しみが増えたとも言えますね。
ですが、
その規格でフォローできる人の割合を増やそうと思うと、
柔らかい素材でクッションを使って靴を作ることになり、
自然と足、歩行を支持する力が靴から失われていく…という傾向がみられます。
路面は舗装され昔と比べると固くなっているので、
靴の軟化・クッションの増加は時代の要求ともいえますが、
何でもかんでもフニャフニャはダメだぜっ!
ってことで、
よく考えてるメーカーは軟性と剛性の両立を目指し今日も励んでいるはずなのです。
こちらは足囲の断面形状を写し取ったものです。
左右を重ねて差を見ている…の図です。
今回の例ですと、(立位で)右足の足長273㎜に対して、足囲273㎜。
JISの表で、最寄りの足長275㎜の欄を見ていくと…3Eと4Eの間です。
左足は足長276㎜、足囲285㎜。
JIS規格に基づくとGとFの間となります。
左右差もありますし、かなり骨量、ボリュームのある足です。
靴選びも苦労しそうです。
ちなみに私が靴を作る場合、このJIS規格表を見ることはほぼ無いです。
お客さんとの話題に上った際に確認する程度です。
足囲について、もし使う素材が自在に形を変えられるくらい柔らかければ、
足の数値だけ追いかけ、ぐるり周囲の寸法を合わせればサイジングは大体合うと思います。
ですが革素材の形状変化には限りがありますし、何より底部分はほぼ形状が変わりません。
断面形状でいう下辺の部分ですね。
なので足巾含め、断面の形状が足とある程度合ってこないと靴のピッタリ感は望めません。
その上で、例えば望む木型足囲273㎜に対して、どれくらいの寸法でフィット感を得られるのか??
大体前後2㎜。
271㎜~275㎜くらいに木型が作れると、プシュッと音がして足が靴に収まる…
そのような感覚で製作を進めています。
それが足のあちこちで起こると。。。
…少し大げさに書きましたが、製作側の問題ですのでお客様はお気軽にどうぞ、笑
こちらはこれから削る木型の墨出しといったところです。
負荷がかかる底面から進めていきます。
大切なのは、足を測った位置を正確に木型に反映させること。
位置がズレてしまうと、どんなに時間をかけて採寸しても無駄になりますので。
足、採寸、木型の位置合わせには気を遣います。
続く・・・
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